ポンコツ研究所

ニートにも人権はありまぁす!

見た夢


*これはフィクションです。
何年か前に亡くなった友人の夢を見た。

忘れていたわけではなかったんだけど、前日まで意識の外にあったことを予想外に思い出してしまってやばかった。
たぶん寝起きの消費カロリーは優にスタバのフラペチーノ二杯分を超えていたと思う。
しらんけど。

僕が自分のことを話すのは割りと珍しいと思うので、よかったら思い出の整理に付き合ってください。

あいつとの関係はなんていうか「曖昧」と表現するのが一番しっくりくるかもしれない。
どこで知り合ったかの記憶なんて朧げだったし「何がきっかけで知り合ったんだろうね」で話が盛り上がるくらいだった。
連絡だってSNSのDMでポツポツと連絡をとるくらいでLINEを交換したかとか電話番号を持ってるかなんて全く覚えてない。
それでも僕たちは友達だった。きっとかけがえのない友だちだった。3、4回だろうと
「〇〇にいるよ」「すぐ行く!」
で成り立つ僕たちは、僕にとってみれば薄くてもそこに確実にある存在だった。

友達かと言われたらお互いはお互いの事を知らなさすぎたし、恋人というにはあまりにも不純な関係だったから、だからこそ曖昧模糊でラベリングできない関係だった。
一番話す時間が多かったのはホテルの一室だったし、お互いの誕生日も月しか覚えてなかった。
言葉に書き出すと川底をかき混ぜたように思いでが呼び起こされてくる。

白い服を好んでいたし、ゴールドに近いブラウンの髪色をしていて、スタイルが良くて身長も168cmくらいあったのにヒールを履くから「俺がちっちゃく見えるじゃん」って小突いたりもした。
ハーフコリアンだからスタイルはいいんだよね~と自慢してコルセットを巻く姿は、今覚えて写真に残しておきたいくらいにはきれいだった。
肌から香る汗と香水の混じった香りだって嫌いじゃなかった。
別になんで居なくなってしまったんだろうなんて今更思ってはいないけど、五感に残ったあいつの感触はどうしたって拭えないし。塗り替えられるものでもない。

思ってもないのに風俗辞めたいなんて常に言ってたし、結局最後までやめなかったね。
嫌な客を引いた日には必ず呼び出されて口直しされて、酒を飲んでる横でドクターペッパーを啜ってた。
たこ焼きが好きだからってたこ焼き食べすぎて、酒も飲みすぎて、動けないって公園に迎えに行ったこともあった。

君はいつも振り回して突拍子もないことしたと思ったら、客に殴られたとか言ってグズグズの顔で待ち合わせに来たりさ。
夜中にベランダで黄昏れてるとおもったら、タバコ臭い手で髪をぐちゃぐちゃにして「お前だけは大人になるなよ」とか言っちゃってさ。

結局君は都内のホテルから飛んで、一瞬ネットニュースになったと思ったら次の日には忘れられてる話題になっちゃってさ。
俺が亡くなったの知ったのだってそれから3日語だったしお墓の場所だって教えてもらえてないんだぜ。
百合が好きだからって、季節外れの百合を11月に飾ってからしてみたり。

整理するつもりがドンドン思い出が溢れて堰を切ったように流れてくる。

どうしようもなくあいつの輪郭がふわふわと漂ってしまって、何も手につかなくなりそうなのでここらで一旦筆を置くことにする。

ある日の思いで、ふと思い出したが、君と出会ったのがこれくらいの季節だったから夢に出てきたのかもしれないね。

お前のせいでハイライトメンソールが好きになったよ。